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作品集 3   全季雑詠

                                 ◎印は主宰特選句

  夜想曲奏でるように洗い髪 乳原 孝
  夕顔の蔓かけのぼる速さかな 高島くに
  はすの華みんな善女となる香り 橋川斐子
 ◎ 千号へ風立ちぬいざ今朝の秋 田中芳夫
          嫁の日の朝星夜星麦の秋 長清水美代子
    風ぬるき中に涼風細く来る 佐久間静子
  大西瓜浮ゐて生家のなつかしく 高橋幸子
  老いの身の命燃やせと蝉時雨 樋口ゆう子
  風の意のまゝに舞ひゐる落葉かな 北口秀子
  無常なりこの世ひと日の花木槿 岡 美智子
  風の盆綾藺の笠の深々と 田中幸雄
  秋あかね空地舞台に曲芸す 森本加寿子
  雲引きて遠く艶めく虹の脚 的場ヒサ子
  夏の雷一つ二つは落ちた音 池田恵美子
  爽やかにだんじりの綱禰宜も引く 山崎貞子
  夏帽子くしゃくしゃにして挨拶す 今本昭子
  噴水の空まで散らす真珠色 道上春子
  この先も聞き手にまわり木の葉髪 福井勝子
  何だかだ言っても親娘土用餅 南トシコ
  祈りつつバイク乗る子を待つ夜長 福島 緑
  梅雨明けの香る山路を祖母訪いぬ 原田光子
  菊日和重く初孫抱きゐて 野口貞子
  麦秋や大地歓喜のウェーブす 森 一心
  首塚の裏は宴か落椿 須藤みさを
  傘に置く花びらこぼれ門を入る 森本加寿子
 ◎ 挨拶は暑さを嘆く言葉から 西森蓮子
  補聴器に水琴窟の涼しき音 堀之内鼓譚
  炎天を一人で帰る園児かな 井上信子
  かなかなや石庭の石疲れいて 家永衣子
 ◎ 植木屋の鋏が生める秋の声 篠原美代
  ささやかな滝音深く不動佇つ 平山茂子
  青すだれ巻きあげほっと一日過ぐ 向山純子
  咲き満ちてゐて寂しげな曼珠沙華 佐藤エリ子
  紫陽花や悲しさ優しさためて咲く 菱田加重子
  残り蚊に夢破られてこの痒さ 山之口チヤ子
  夕映えや蜃気楼のごと浮かぶビル 新居純子
  忌の夜も咲き通しけり水中花 あめ・みちを
  ふる郷は児の手に余る夏の星 五十嵐一雄
  年金の民の竈や彼岸花 小原 勝
  天を向く嘴にやさしき鵜匠の手 山下静子
  葛餅のぷるるん加減よろしけれ 岸  薫
◎ 麦こがしむせつつ母を想ひけり 石井キヌ子
◎ 蜘蛛の囲の雨受け止めて日を還す 増田雅子
  目瞑れば浄土と想ほゆ夏の雲 西村香代
  床に臥す師の文届く梅雨明け日 山口房子
  ふらここの微動だもせず油照り 井上蕉花
  遠き日の母の日傘やまぶしかり 山浦 純
  夏足袋や若手役者の総さらい 平橋道子
  朝顔のつるが手探り竿の先 鈴谷 悠
  重き荷や手を持ち直す蝉時雨 小路博子
  暮れゆきつすすむや鹿の親子連れ 谷口志津
  船渡御の過ぎて川面に団扇浮く 苧田千鶴子
  付けられし名を恥ぢらひて花菖蒲 山村絹子
  親指の刺抜け落ちて夕端居 牧瀬祐子
  大文字ことしも無事に送りけり 泉 英蔵
  七夕や碧き地球をとこしえに 駿河谷敏枝
 ◎ サングラス時には涙かくすため 東  徹
  雲の峰心の澱を持て余す 乳原綾子
  えんどうの青さよ父の命日よ 地主重子
 

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