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作品集 2   全季雑詠

                                印は主宰特選句

  身を拭う独り住まひの古簾 大洞咲子
  葛城の青葉かすむや湯のけむり 古野燕安
  柔らかな光透くなり夏暖簾 横田美智子
  炎天下昼寝が化けて爆睡す 菱田加重子
  鵯去りてとり残されし庭の黙 池田慶子
  満天にさよなら花火ひろがりぬ 佐藤エリ子
  囀りの不意の静寂の予感めく 馬場豊子
  留守番は八十路のつとめ文月くる 江波英子
  空蝉に生への意志が残されし 家永衣子
  朝な夕な獅林伸びゆく竹の春 田中幸雄
  地車のおはやし近し気もそぞろ 松本忠重
  梅ののすむ四阿に休みけり 堀之内鼓潭
  紫陽花に見とれて妻を見失い 瀧川 正
  夏衣夫の背すこし丸くなり 小西由紀
  空蝉に五分のたましひ透けて見し 三井満子
  紫陽花を切って迷いを断ちにけり 伊藤菊代
  水中花泡を抱いて大輪に 川部秀江
  艶やかに華やぐ牡丹匂ひたつ 西脇巳知可
  片陰を拾いて行けり黄帽子 澤田稔子
  片頬に花茣蓙美しき夢残す 香田きぬ
  汗のまま少女正座す武道場 井上幸郎
  篝火が水面に弾ける鵜飼舟 国分順一
  八十路生き七夕竹を飾りたり 平山茂子
  七夕や駅舎に笹のかざりゆれ 向山純子
  院内でぐずる子供に親の汗 木村安子
  罪のごと母のうすものまぶしかり あめ・みちを
  羅や恋も喧嘩も夢の果 五十嵐一雄
  白日傘過ぎて余韻の後髪 富田恭子
  久方の夕立吸ひつく様な土 石井キヌ子
  玉の汗つつっと流るる若さかな 柄須賀早智子
  梅雨明けや前頭葉の動き初む 岸  薫
  全山の青葉を沈め大堰川 篠原美代
  こんにゃくに花咲かせたり針供養 畑山美代子
  南風の幻覚も去り青田見ゆ 島田すま子
  バンダナの少女風切り風光る 後藤芳江
  公平に降るを忘れし夏の雨 小路博子
  朝市のほほづきしきり呼ばれおり 谷口志津
  合す手に弥陀の半眼青葉光 苧田千鶴子
  藤房を縫ひゆく風のほのかな香 堀江政子
  いとしさは蛍火まあーるく囲うごと 香田きぬ
  修行僧に道ゆずられし牡丹寺 八尾綾子
  旅の途の水平線の秋入日 竹内恵美子
  母の忌や故郷に届く夏の雲 田内 美弥子
  蝉時雨朝の静寂破りけり 大洞咲子
  静けさや竹の皮落つ音ありぬ 大村佐紀子
  寒の月ゆたりと屋根に腰おろす 大畑よしえ
  着メロを乳房で受ける海開き 竹下一善
  焼きたてのパン香りけり夏の朝 荒木律子
  はや八百や稲穂の重み寿ぎぬ 近藤六合美
  薫風へ身をゆだねたる一人旅 伊藤菊代
  向日葵や常に輝く日々であり 有馬正恵
  乳母車はみだす日焼けの膝小僧 塚田カヅヱ
  獅林の輪ひろがる虹のすがしさに 大平久子
  行きすぎし女うつくしき夏帽子 二宮節子
  炎天や靴ちぐはぐで買物に 横田美智子
  わだかまり水に流して梅雨晴れり 高松勝代
  花石榴古き空家にこぼれをり 吉田千代子
  島風にのらりくらりと烏瓜 池田慶子
  神輿もう曳けぬ齢や遠囃子 今井薹子
  抱く祖母も嬰も単衣で宮参り 畑山喜美代
  終生の珠となす山比叡おぼろ 古川壽美
  蜩や為さねばならぬ事ばかり 山村絹子
  古梅酒琥珀の水は夜の友 平井孝治
  初蝉は一両電車急がせる 林のぶえ
  春愁にふと憧れて育児の身 乳原綾子 
     

 

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