第九回北嶺忌句会

定年の背筋きりりと新日記		的場秀恭　主宰
○　主宰選句　◎　主宰特選句
	緋のリボン結びし仔犬の狗日かな	田中芳夫
	ご破算にねがいましては去年今年	池田慶子
	「命なり」とよめる心よ初春は　（８３才を迎えて）	河原豊操
	雨戸引くその音に安堵春隣	池田慶子
	鈍色の空明けそめぬ寒あやめ	駿河谷敏枝
	干蒲団母に抱かれる如く寝る	高砂昭子
	翁は舞い媼は謡う冬湯宿	古川壽美
	寒牡丹菰に影置く薄日かな	木寺茂子
	雪を掻く宿命といふ高き壁	いがらしかずを
	糶り市の飛び交う符丁息白く	角井久美子
	霏々と雪闇しろくとも黒くとも	佐久間静子
	離島にも嚴と一宮初日射す	須藤みさを
	初春のしづく光るやすすぎもの	乳原　孝
	表紙絵の猪と躍動新年号	岸　　　薫
○	日溜りは小さき宇宙初雀	井上幸郎
	ことごとく雨の雫や猫柳	大村佐紀子
	人は寝ね痩せたる熊は眠られぬ	宮崎善行
◎	凧揚げて指先に知る風の息	田中康雄
	枝打ちの良き谺して小春かな	島田スマ子
	初弘法尺貫法が活きてをり	篠原美代
	印籠を拝むごと受くお年玉	向山純子
	鰭酒がよく効いたのか小唄調	平井政博
	屠蘇に酔ひ春の想ひの胸に充つ	河原豊操
	一言の添え書なごむ年賀状	松崎泰子
○	柚子風呂に満たされていてふとひとり	澤田稔子
	日脚伸ぶ屋根行く猫の背のびかな	山浦　純
	長電話いつ迠続く小正月	山村絹子
	何事も控へ目良しと初御籤	森　一心
	白鳥の湖暮れゆくや遠比叡	田中湖風子
	青洟の子ら絶滅せり冬茜	高原疆次
	夜の雪言葉無けれどおそろしき	いがらしかずを
	バーゲンのやたら目につく春隣	山村絹子