第九回北嶺忌句会

寒灯を点し寂しき部屋ふやす		的場秀恭　主宰
○　主宰選句　◎　主宰特選句
	新年会ほろりと酔いて窓の月	坂口高子
	折鶴のべに色目立つ小正月	新居純子
○	日に三度身繕ふ猫春隣	あめ・みちを
	学校から風邪連れ帰る赤ら顔	角井久美子
	数独に妻夢中なり春隣	森　一心
	「溜息の日」有りとすれば大晦日	小原　勝
	破魔矢受く生後十日の大あくび	篠原美代
	月凍てて北嶺人を近づけず	田中康雄
	余生とは死ぬまでの日々寒夕焼	井上幸郎
	どんよりと雲にさからふ冬薔薇	木村安子
	蛇口より水のつぼみや春隣	乳原　孝
○	年頭に老いを云わぬと決めにけり	岸　　　薫
○	ケイタイの圏外にゐし雪女郎	東　　　徹
○	かるた取り重なり合ひし手の記憶	香田きぬ
	早梅やながき句の道北嶺忌	山本フミ子
	初日にも願ひ産土（うぶすな）にも願ふ	井上幸郎
	柚子熟れて眩しきほどの村となり	大村佐紀子
	暖冬の有難さより気味悪さ	増田雅子
	去年今年ポウンとひとつ手を打つて	宮崎善行
	初茜梅ばち紋の鬼瓦	塚田カヅヱ
	寒雀小さき胸を張りに張り	香田きぬ
	付けられるだけの福つけ戎笹	梶谷予人
	八十路坂登る寒紅強く引く	長清水美代子
	祖母語る武勇伝聞き餅捏ねる	三木市子
	山椒の小さき芽にも芳り持つ	島田スマ子
○	でっかいぞ今年の初夢鮪釣る	田中幸雄
	千の風神戸の空に阪神忌	森　一心
	夢ゆめと過ぎし七坂木の葉髪	須藤みさを
	黒光る梁ゆるぎなく炉火の美し	須藤みさを
◎	日記買ふ知らぬ月日に逢ひたくて	長清水美代子