主宰作品             

 　　　　　　　　　　夏めくや脚摩りみし叩きみし 　　　　　　　

  的場　 秀恭　

 以下会員作品　　○　主宰選　　　

  新緑の日の斑に濡れて妻若し

  田中 　邦夫

  緑蔭に沈めば海の底に似て

　あめ・みちを

　九重に香る古代の八重桜

　平田   市子

  平成の薫風纏う大極殿

　岸　　　　薫

 ○

　ラムネ抜く音が谺す鄙の店

　田中   康雄

　余生まだ為す事多し松の芯

　塩坂   和子

　新緑の奈良に降り立ち遷都祭

　有馬   正恵

　夏シャツのじやんけんぽんと下校の子

　大庭   宣子

　緑蔭に旧知のごとく和みおり

　高砂   昭子

　川風にはばたく千の五月鯉

　向山   純子

  半眼の嬰の風船手を離る

　中田   裕子

　藤の香の世の盛衰に関はらず

　増田   雅子

　ぼうたんの色濃き順に昏れにけり

　木寺　 茂子

　手話と手話目と目で交す春の恋

　平井　 政博

　麦笛を吹けば昭和のよみかへる

　大平　 久子

　ひきがへる合点承知と安請け合ひ

　岩佐世紀子

　袋掛鴉にじつと見られゐて

　東　　     徹

 ○

　暮の春歩く速さの渡し舟

　田中      俊

　捩花のひと筋伸びて少女めく

　塚田 カズヱ

　青嵐阿修羅の目見に愁ひあり

　野村   朴人

　夏めきて洗車の水のほとばしる

　大村佐紀子

　透明な傘に卯月の雨の粒

　松島　 圭伍

　茶を摘めるうねる緑の縞の中

　井上 　幸郎